地球環境は今









ポスト京都へ向けて日本の指導力が問われている
今年の2008(平成20)年は先進国に温暖化ガスの排出削減を義務付けた京都議定書の約束期間(2008-12年)が始まるスタート年である。環境、経済産業両省の合同審議会は京都議定書の目標達成計画を見直して、追加策をまとめたが、小手先の数字合わせに終始して、急場を凌いだ印象は拭えない。これでは、約束の目標達成への決意は疑わしく、「ポスト京都」へ向けての交渉で指導力を発揮できるかどうか、心細い。日本の温暖化対策に対する国を挙げての対応力が国内外から問われている。


1.議定書で約束の6%排出削減は、達成できるのか。
日本が議定書で約束した2012年度までに90年度比6%の削減目標を達成するには、従来の政府試算であと2,000万‐3,400万トンの不足であった。そこで、合同審議会ではこの度、追加策を盛り込んだ最終報告書をまとめたが、その骨子は別表1の通りである。これらの施策が功を奏して、重複分を除けば、3,500万−3,600万トンを確保して、不足分を補えれば、約束の削減目標を達成できる、としている。
しかし、温暖化防止は机上の数字合わせで計画通り進む程、生易しいものではない。特に、クールビズをはじめ、省エネ家電の普及推進など国民運動による排出削減計画の目標値678万−1,050万トンを実現するには、国民一人当たり年間で90kgを削減する必要がある。
全国民が毎日、シャワーを浴びる時間を1分間ずつ短縮しても、削減できるCO2は27s。テレビなどの主電源を小まめに消し続けても、24sに過ぎない。国民の家庭生活での省資源、省エネを余程の覚悟で継続的に実行して貰わないことには、この実効性は担保できない。
低炭素社会への移行を加速するには、排出権取引の制度化とその導入が必要不可欠であるが、これを賛否両論の併記で先送りした点も、後ろ向きである。
しかも、日本の削減枠6%のうち、森林吸収分3.8%分と政府が海外から取得する排出枠1.6%、計5.4%を賄う基本方針には、変わりはない(別表2参照)。 従って、あとは約束期間内の天候次第で、呉々も猛暑や厳冬にならないことを祈りたい。


2.ポスト京都の枠組みづくりは、何が課題か。
インドネシア・バリ島で開かれた先のCOP13(国連気候変動枠組み条約締約国会議)は、京都議定書に続く温暖化防止の新たな枠組みづくりである、いわばポスト京都へ向けた行程表「バリ・ロードマップ」を採択して、開幕した。その骨子は@温暖化ガス削減とその手法、A途上国で発生する温暖化被害軽減のための支援、B途上国の温暖化ガス排出削減のための技術移転、Cポスト京都への交渉期限、の4点である。
温暖化ガスの排出削減については、IPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)の報告書が示す数値目標の設定をめぐり、合意に至らず、今後の検討課題とした。ただ、議定書では削減義務を免れていた途上国にも削減努力を求めていくことを明記、中国をはじめ、インドなどもポスト京都の枠組みに参加することで合意したが、途上国を含む数値目標をどのように設定するか、これが最大の難題となる。
排出削減の手法としては、日本の産業界が強く求めてきた「セクターアプローチ」も盛り込まれている。議定書にはなかった新手法で、鉄鋼やセメントなど産業分野別に国を超えて削減していく方法である。省エネ効率などを基準に、エネルギー効率の悪い国の鉄鋼業には先進国から技術を移転して、改善を促す。
省エネが進んでいる日本にとっては有利で、先進国から途上国へ省エネ技術の移転を促す点でも歓迎してよい。途上国にとっても、国別割り当て制よりは受け入れ易いとみられている。
途上国支援の強化も、ポスト京都の大きな課題である。その柱は、資金援助と技術移転である。いずれも途上国の日本に対する期待が大きく、日本の積極的な交渉力が問われている。
ポスト京都への交渉期限は、09年末までで、わずか2年間の猶予しかない。具体的には、同年末にデンマークで開催するCOP15で、12年に終わる議定書の約束期限に続いて、13年からのポスト京都の新しい枠組みへ、間を空けずに移行する必要がある。


3.ポスト京都の枠組みづくりへ向けて、日本の課題は何か。

次の3点に集約できる。1つは、直面する議定書の6%削減の目標を達成することである。温暖化防止への道程は、議定書を第一歩に、ポスト京都と、さらにその先へ、未来の世代へ継承していかなければならない永遠の課題である。未来世代のために、その第一歩で躓くわけにはいかないことである。
2つは、排出権取引をはじめ、環境税など、制度設計とその整備に早急に着手して、温暖化防止へ向けた持続的な排出削減を経済、産業の活動自体にしっかりと組み込んでいくことである。日本経団連に気遣う経済産業省が排出権取引や環境税の制度化を敬遠する余りに、その是非を巡り貴重な歳月を浪費している余裕はなく、政治決断を急ぐ必要がある。

3つは、ポスト京都の枠組みづくりへ、環境立国・日本は積極的に指導的なイニシアティブを発揮することである。ポスト京都の枠組みづくりには、中国、インドを含む全員参加型の数値目標を設定することが先決である。それには、途上国向け支援が不可欠で、資金援助と技術移転の両面で環境先進国・日本の対応がその成否の鍵を握っていると言っても過言ではない。
今年の主要国首脳会議・洞爺湖サミットでも温暖化防止が中心議題となる。ホスト国・日本は地球社会の低炭素社会の構築へ向けて、その範を示す絶好の機会を迎えている。この機を逃すことなく、日本の英知を総動員すべきである。

(嶋矢志郎 財団法人地球環境財団理事長)

 



 

投稿者:earthianat 20:32| 地球環境の今